僕は死んだ

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僕は死んだ

   地下1階。  僕の両手は空いている。  僕は学校の教室ほどの広さの空間に立っていた。下ってきた筈の階段はどこにもない。先ほどもらった袋はカラビナで腰に固定されていて、そこに元々あった筈のバッグは行方不明だ。  袋の中に何かが入っている。それが『大きな肉まん』であることが僕にはわかった。  取り出してみると、肉まんはホカホカと湯気を立てていた。持っていられないほどの熱さではない。裸の状態で袋から取り出されたにも関わらず、表面にはゴミが付着していなかった。  綺麗なものだ。旨そうである。しかし今はお腹が空いていない。“満腹度”で表現すると100%といったところだ。  100%の満腹度。あまりに自然と把握できるので、周囲の様子を目で見てわかることを不思議に思わないように、僕はそれを疑問に思わなかった。僕の“体力”は15ポイント分で、“ちから”は8ポイント分だ。それぞれが何を意味するのか知らないが、強烈な実感としてそれらがわかる。片付けようと思った肉まんはごく自然に袋に入っていった。  四方を壁で囲まれた空間で、僕はひとり立っていた。いや、ひとりではない。少し離れたところに何かがいる。     
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