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「私が思っていた以上に、王族への恨みは大きいようです」
「いや、それはどうかな」
ギュードがクライルの考えに疑問を挟んだ。ギュードは金色の兜を指で弾き、鈍い音を響かせて誰もいない正面を向く。
「こいつぁ、俺の経験での勘だが………王様をやったのは東で戦っている奴らとは違う気がするな」
「………説明してもらえますか?」
クライルの表情が変わり、ギュードの主張に食いつく。
「単純に割に合わないんだよ。東に注意を向けるならば、ゲンテの街で戦い続ければ良い。その方が王都から距離が稼げるし、籠城する分、戦力の消費を押さえられる」
だが魔王軍はさらに大きな街のブレイダスに侵攻し、結果として少なからず損害を出している。
「あんたも分かっていると思うが、俺達は相手の裏をかくときには必要以上のことはしない。最低限の行動で最大限の利益を得る。今回で言えばブレイダスに攻め込んだことが余計なことになっているってことさ」
ギュードの説明に、クライルは口元に手を置いて考えにふける。
そして1つの答えに辿り着く。
「………つまり、魔王軍も一枚岩ではないと」
「さぁね。あくまでも俺の勘だよ」
何も証拠はない。ギュードは右手を天井に向けて左右に払った。
結局この話はクライルがそれ以上何も言わない形で消える。
「とりあえず、これからどうするつもりだ?」ギュードが話を変えた。
今この国には統べる者がいない。それだけで国家としては致命的だった。
「明日の午後には国民に向けて、国王陛下の暗殺事件と王女の行方不明を発表します」
その2つには魔王軍が絡んでいる。魔王軍の存在は、国民にとって公然の秘密だったが、国がそれを認めることで、これ以上の混乱を防ぐのだという。
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