終章

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「そして臨時措置という名目で、私が19代目の国王として、その政務の全てを引き継ぐことも併せて発表します」 「国王か、大きく出たな」  ギュードはイーチャウの反応が気になったが、彼としてもいきなり王位につくことはクライルに求めなかったらしく、クライルの提案には反対しなかったという。 「………イーチャウには既に話を通してあります。彼には正式に騎士総長となって魔王軍を撃退し、その功績をもって王位を譲ることを約束しています」  クライルが見せる深い笑みに、ギュードは一瞬だけだったが悪寒を感じた。 「空手形もいいところだ。さすがに同情するね」  恐らくイーチャウが玉座に座ることはない。どのような形でかはギュードには分からなかったが、魔王軍との戦いの中で彼は命を落とすだろう。クライルは口にはしなかったが、既に彼の予定表は 机の上で両手を組んでいる男によって決められているように聞こえた。 「それにしても、魔王の予言書には驚かされます………ここまでの事を予測していて、さらに対応策まで用意しているのですから」  クライルが天井を見つめて息を吐く。 「その予言書って一体どんなことが書いてあったんだ?」  ギュードが半分冗談のつもりで尋ねてみた。 「知りたいですか?」「教えてくれるのか?」  ギュードがクライルに顔を向け、わざとらしく笑って見せる。クライルもその意味が分かっているのか、眉を上げて肩をすくめた。 「………嫌な奴だ」 「フォースィさんにも同じことを言われましたね………まぁ、追々話していきますよ」  つまりは答えてくれない。ギュードは舌を打って体を戻す。  クライルは紅茶の底が見えたことに気付くと、ゆっくりと立ち上がる。 「さて、これから私は明日の発表と、王位継承に関する声明文の草稿に入ります」  机の前から離れたクライルは、壁の前にある棚、その引き出しから金属音のする麻袋を2つほど取り出すとデルの座るソファーの前にあるテーブルに静かに置いた。 「片方が今回の仕事の報酬、もう片方が新しい依頼の前金です」  そしてクロムにもクライルは顔を向ける。 「クロム、貴方にも動いてもらいたいことがあります」 「は、はい。何でしょうか」  クロムが慌ててクライルとギュードのいる場所まで移動した。
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