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「………同業者か、それとも誰かのお抱えさんか」
少なくとも依頼主である王女殿下が追跡を依頼する訳がない。とすると、歴史書を持っていかれて困る人間と決まるが、ギュードはとりあえず追跡を撒くことに集中する。
手元には同席していたギルドのオーナーの部屋から適当に貰ってきた本を持っているため、本を預けたフォースィ達にまで危害が及ぶことはないだろう。追跡してきている人数からギュードはそう判断する。
適当に屋根を飛び回ること数分。ギュードは適当な所で家と家の間に着地し、闇に紛れる。北区のスラム街に入れば街灯も少なく、追手を振り払うのには丁度いい。
案の定、追跡してきた者達も近くに着地し、辺りを見渡している。
降りてきた人間の数は4人。全員が頭まで布を巻いた黒ずくめだが、1人が指を差し示し3人を散開させて捜索に当たらせた。
「馬鹿だなぁ、自分が指揮官だと言っているようなものじゃないか」
ギュードは1人残った指示を出した人間の背後に立ち、既に口を手で塞いでいた。追手の人間は何が起きたのか分からず、目を大きくする。
「はい、残念賞」
ギュードはそのまま背中に短剣を当てて、骨の間を縫うように押し込んだ。黒ずくめの人間は何度か大きく跳ねたが、数秒後には動かなくなる。
ギュードは仲間が戻る前に黒ずくめの体を漁るが、さすがに何も出ず、仕方なく路地裏に遺体を隠した。
「撤収、撤収っと」
死体は仲間を呼ぶ。ギュードはすぐにその場を離れ、今度こそ闇の中に姿をくらました。
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