第三章

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 今更ながらにデルは気が付かされる。  王国騎士団は自分が思っているほど、正義の集まりではなかった。平民と貴族との軋轢はあるが、平時では国を守る、民を守るという言葉が掲げられ、同じ目的のために行動してきた同志のような感覚だった。  だが非常時になり、指示する者を失った途端にその姿が仮初のものだったと見えてくる。騎士総長の仇だと叫んで欲しかった訳ではない、死んだ仲間達のためにと拳を振り上げなくてもよい。ただただ王国の為に、そこに住む者達のためにと頷いてくれるだけで良かったのである。  だが団長会議であっても、イーチャウは自分の利益を第一に考え、地位に固執し、その性格が分かっていても周囲の団長達は強く異を唱えることはしなかった。 「………俺も似たようなものか」  部下や住民達を失ったという自責の念を理由に、異を唱えなかった自分の情けなさをデルは噛みしめる。他の団長達が自分に代わって異を唱えるだろうと、それが当たり前だと人任せにしていたこともまた誤りだと今になって気付く。  このままでは王国騎士団は先の過ちを繰り返し、敗北する。次の敗北は王国の滅亡を意味するかもしれない。デルは表情を曇らせたまま、会議室を後にした。
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