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終章
宰相の執務室の扉を叩く音が聞こえる。
クライルは入室を許可すると、金竜騎士団の鎧をまとった騎士が2人金属音を立てながら執務中のクライルの机の前まで近づいてきた。
「不届き者達を見送って参りました!」「白々過ぎる………」
背の高い方の騎士が、騎士の真似事をする子どものように大袈裟に敬礼し、もう一方の女性騎士は兜越しに手を当てて溜め息をつく。
「どうしてその動きで怪しまれないのか甚だ疑問ですが………とりあえずご苦労様でした」
ちょうど良く書類を書き終えて署名したクライルは羊皮紙を机の中にしまうと、2人を労った。
「てっきり彼らについていくものだと思っていましたが?」
クライルの疑問に、背の高い騎士は手を左右に降りながら暑苦しい兜を脱ぎ、後ろのソファーの上に放り投げる。
「冗談。誰かの手のひらに乗るのは御免被りたいんでね」
髪についた汗を振り払い、ギュードは新鮮な空気を大きく吸い込んだ。
「そうですか」
クライルは特に興味もなく頷き、隣の女性騎士に声をかける。
「クロム、あなたも本当の主人の元へと戻っていいのですよ?」
イーチャウと手を組んだ以上、ここにいる必要はない。クライルは同じく兜を脱いだ黒髪の女性に声をかけた。
「………偽物だったとはいえ、勝手に動いた私をイーチャウ様は許してくださらないでしょう。ならば、ここでお茶を入れる仕事に就くのも悪くはないと思って戻ってきました」
姉の仇であるギュードの横に立つことは彼女にとって不本意であったが、今の自分には相討ちにもならない力の差がある。
「分かりました、これからもよろしくお願いします」
クライルが早速紅茶を入れるよう、彼女に依頼する。
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