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第六章
「最短だが中央階段はなるべく使わないで行きたい」
「ならば、こっちです!」
バイオレットが先頭を担当して王城の廊下を走り続ける。
2階に上がった2人は剣を片手に中央階段を避け、東奥の階段を目指した。
「デル団長、前方に衛兵が3名!」
「分かった、交代だ!」
デルは瞬時にバイオレットの前に出ると、態勢を低くしたまま右足を踏ん張り、たったの一歩で衛兵たちの目の前まで移動する。
「すまん!」
衛兵が息を吸って驚き、声が出るまでに、デルは剣の腹で衛兵達を壁と床に叩きつけた。
「さすがですね」
遅れてバイオレットが到着すると、デルは落ちていた丸盾を彼女に手渡す。片腕を全て守れる王国騎士団の物よりかは随分と小振りで、肘から手を守れるだけの大きさしかないが、城内勤めの兵が使っているだけあって質は悪くない。デルも自分のために同じ盾を拾うと、革ベルトを巻いてそれを左腕に固定させた。
「服の上から巻いているだけだから気を付けろ。いつものように使っていると、あっという間に腕の皮膚が剥けるぞ」
「………分かりました」
バイオレットは倒れた衛兵たちの顔周りを触って気絶を確認すると、デルを先頭にして隅に見えていた階段を上る。
「この階段で4階まで上がれます。5階の謁見の間には中央階段を、王女殿下のいる6階へは、その奥の階段を使う必要があります」
4階から先の階段は1つずつしかない。つまりそこには衛兵たちが集まっていることを意味する。
デルは彼女の言葉に頷いた。
「分かっている。だが時間が惜しい。王女殿下が今どうなっているか分からないが、イーチャウ達の手に落ちる前に確保しなければならない。当たり前だが全員と相手する暇はないぞ」
ここから先は走り抜けるしかない。相手をするのは正面にいる者のみ。デルの考えに、今度はバイオレットが頷いた。
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