第七章

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第七章

「王女殿下!」  デルが声をあげた。  階段の上の玉座、その奥の階段を隠す(とばり)の影から現れたのは、赤い長髪の男。王国から与えられた内政の長を示す赤い外套をまとった男は、女性の形をした銀色の人形に王女の両腕を捕まえさせていた。  白いドレスを着たアイナ王女は、下を向いたまま銀色の髪を垂らし、動く気配がない。 「あれは………金属精霊?」  フォースィの顔が険しくなる。 「金属精霊、確か魔王軍にも似たような奴がいたな」  バルバトス。デルの口から体内に飛び道具を仕込んでいた魔王軍77柱の名が漏れる。  フォースィが頷く。 「自然界の物質に魔力の源であるクレーテルが長い時間をかけて大量に入り込むと、ごく稀に自我を持つことがあるのよ」  この場合、金属に自我が芽生えたということになる。 「まぁ、半分は当たりですね。エクセル、自己紹介を」「はい、マスター」  エクセルと呼ばれた銀の女性は、クライルの命令で一歩前に進むと淡々と話し始めた。 「初めまして。人工精霊のエクセルです。今は、クライル様をマスターとして活動しています。以後お見知り気を」 「人工!? 金属精霊を人の力で産み出したというの!?」  フォースィが驚く。彼女が普段見せない表情だけに、その道に詳しくないデルも余程のことだと口を紡いで様子を見ていた。 「二百年前の魔法技術ならば可能だったらしいですね。残念ながら今はその技術は失われていますが」  二百年。  フォースィの求めている単語が現れる。 「クライル宰相、あなたに聞きたいことが山ほどあります」 「それはそれは………。女性から尋ねられることは嬉しい限りですね。かつてカデリアの勇者と呼ばれた者、その妹の末裔ならなおさらですよ」  クライルが胸に手を当て、さも大袈裟に体で表現する。
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