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「今日雨大丈夫だった?」
佐伯がよく通る声で、目の前の女の子に声を掛ける。タメ口で、慣れ親しんだ口調。女の子側の今日の幹事、『里美ちゃん』だとすぐに分かった。
里美ちゃんは愛想がよく活発な所謂イイコであり、遊び相手には向かないというのが佐伯からの前情報だった。
「結構すごかったですよね。朝は降られましたよー」
ハンガーに丁寧にコートをかけながら、里美ちゃんは佐伯に笑顔を向けた。決して細くない丸い手を髪にあてがい、手櫛でふわふわした髪の毛を梳く。
確かにイイコそう。マジで彼女を探している友達に紹介したいタイプ。あと、俺の統計的に『里美ちゃん』という名前で性格の悪い子はいない。まあ、俺は全然好みじゃないけど。
佐伯が女の子にメニューを見せながら、「俺ら三人ともビールだけど、どうしますか?」と尋ねた。
女の子たちは顔を寄せ合ってメニューを見て、よく聞くカクテルの名前をそれぞれに囁き合っている。
歯科医院で働く動機って何だろうと、彼女たちを眺めなら考える。医療従事者としての熱意を滔々と語るよりも、『えっ、何となく~』って言って欲しい。その方が楽だから。
自分持ってます、みたいなの、面倒くせーから。
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