プレミアムフライデー・ナイト

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ここまでの道程のこととか、今日仕事何時までだったかとか、そういうどうでもいい話をしているうちに飲み物が揃う。 何をヨロシクするのかよく分からないが、「よろしくお願いしまーす」と言いながらグラスを鳴らし、ビールに口を付けた。 金曜日のビールは旨い。暖かい店内にずっといたから、喉が乾いていた。冷えた液体が喉を通り、程よく疲れた身体に染み込んでいく。 「じゃあちょっと、名前とか、そういうの一応やっときますか」 佐伯がそう言いながら、その大きな手を俺の肩に置いた。突然だったので手に持っていたジョッキがぐらつき、ビールが中でたぷんと跳ねてヒヤリとした。自己紹介って言えよ、と心の中で突っ込む。 「俺らは三人とも大学のときからの友達で、こっちの性格悪そうなのが滝本 充輝、奥に座ってる何考えてるかよく分かんねー感じのやつが浅野 路人(みちと)です」 ハイハイ、他己紹介(そのパターン)ね、と内心で呆れながら佐伯を睨んだ。 それでも女の子たちは愉しそうにころころと笑い、「性格悪いんですか?」などと返してくれる。
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