プレミアムフライデー・ナイト

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わたしは今28だ。 今日の相手が同い年だと聞いたから参加を決めたのに、里美ちゃんの勘違いで、本当は全員年下の27歳だった。 そりゃあ、24の里美ちゃんからしたら、27も28も変わらないんだろうけど……だけど、こっちからしたら、たかが一歳、されど一歳。 この一歳差がどれだけのハンデになると思ってんの。 そもそもわたしは、年上専門なんだって。 とは言え、どこに優良物件が落ちているかはわからない。 絶対優良物件だと思っていたのに全くの期待外れなこともあれば、その逆もある。今回何もなくてもこの出会いが最高の出会いに繋がる可能性だって、大いにある訳で。 乗り気であろうとなかろうと、常に全力で臨むのが合コンの流儀であり、参加する者としての(たしな)みだ。 「里美ちゃーん」 ざわめきの向こうから掛けられた声。 群衆を掻き分けこちらへ向かってくる姿に、里美ちゃんは「あ、佐伯さぁーん」と笑顔で手を大きく振り、坂上先生は年下男子の魅力を饒舌に語っていた口を何事もなかったように閉ざし、わたしは余所行きの微笑みをかっちりと装備する。 ――さぁ、楽しい楽しい合コンのはじまりだ。
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