第3章

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第3章

 長かったような、あっという間だったような夏休みが終わった。  夏休み明けの初登校日は快晴だった。私は駅から自転車で学校に向かい、そのまま教室に入った。  今日は授業がないけれど、念のためにと持ってきた一冊の教科書とノートを開く。だが、集中することができず、すぐに閉じて鞄の中にしまった。  夏休み、あれからセンパイとは会っていない。メッセージも送っていない。今日、センパイは学習ラウンジにいるのろうか。多分、いるだろう。だけど、私はそこに行けなかった。あの日から、毎日考えているけれど、センパイとどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。いや、自分がどんな顔をしてしまうのか予想できたからだ。  センパイが卒業したら、一緒に学校に通うことも、一緒に勉強をすることもできなくなる。それは当たり前のことだ。それなのに、センパイが海外に行ってしまうと知って、どうしてこんなに苦しくて、寂しくて、動揺してしまうのか、よく分からなかった。  私は立ち上がって教室を出た。そして、真っすぐに学習ラウンジに向かう。  学習ラウンジの扉を開けた。センパイは、いつもの窓際の席でテキストを開いていた。集中しているのか、私が入ってきたことに気付いていないようだ。  私は大きくひとつ息を吸ってから笑顔を作る。 「センパイ、おはようございます」  すると、センパイは少し驚いた顔で私を見た。そして、笑みを浮かべて「おはよう」と言う。 「やっぱりいましたね」 「紫蒼さんは、ちょっと遅かったね」 「久しぶりの学校だったので、ちょっと寝坊しちゃいました」
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