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第4章(最終章)
散々話し合った結果、学校が終わってから、センパイの自転車特訓をすることが決まった。場所は、センパイの自宅近くのサイクリングロードだ。
もちろん、センパイを頷かせるのは大変だった。
「自転車の練習をしましょう」
私がそう言ったときのセンパイの第一声は「なんで?」だった。
唐突過ぎる感は否めないが、それにはちゃんと理由があった。自転車に乗れないセンパイが、私との練習で乗れるようになったら、きっと一生そのことを忘れないだろうと思ったからだ。
子どもっぽい考えだと思うし、センパイの前の彼女に嫉妬しているだけなのかもしれない。だけど、私は、センパイの傷ではなく、幸せな楽しい思い出として、センパイの心に残りたい。
だけど、そんな恥ずかしいことをセンパイに言うことはできなかった。
「なんでって、センパイが自転車に乗れないからです」
「そうじゃなくて、そもそも、私と一緒にいない方がいいって話で」
「そんな話でしたか?」
「そうだよ」
なんだかセンパイは少し怒っているようだった。
「センパイの話を聞いて、それで私が一緒にいるべきじゃないって納得したら、でしたよね。話しを聞いても、一緒にいちゃいけない理由はわかりませんでした」
センパイは、困ったようでもあり、うれしそうでもある微妙な笑みを浮かべる。
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