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初顔合わせのあの日、森沢は確か……。
そうだ、「弟のイチ、よろしくな」
そんな簡単な紹介しかしなかった気がする。
充と卓也はイチに近づき、早速自己紹介を始めた。
「イッちゃんか、俺は充、よろしくな」
「俺は卓也、よろしく」
「えっと、充さんと卓也さん…」
「タンマ」
突然充が大声を出した。そして顔を真っ赤にしながら呟く。
「さん付けとかマジ止めて。充でいいよ。許す」
「でも……」
「他の奴はともかくイッちゃんは一輝の弟だし、それに仲間なんだから」
一珂は困ったように一輝を見てから、「じゃあ……充君と卓也君」と恥ずかしそうに呼んだ。
にこりと笑った一輝が葛城を手招いた。
「そんな端にいないでこっち来いよ」
壁にもたれながらぼんやりとみんなを見ていた葛城は、こくりと頷いて一輝達の側に歩み寄った。
「イチ、こいつがギターの葛城。一見怖そうに見えるけど、怖くないから。たぶんな」
「たぶん?」
一珂がじっと葛城を見つめる。
なんか吸い込まれそうだ。
まだ幼いがその瞳には力があり、見るものを引きつける。
「ウソウソ、怖くないから。葛城、弟のイチだ。仲良してやってくれな」
「ああ、努力する」
「なんだよそれ」
一輝が笑いながら葛城の肩をバンバン叩くのを 、一珂が嬉しそうに見ていた。
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