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それにしても 、どうして森沢はクラスでほとんど絡みがなかった俺をメンバーに誘ってくれたのだろう?森沢がバンドやりたいと言い出した時賛同したのは充と卓也だけだったから、単なる人数合わせのためだけだとは思うが。
高校に入った俺は、父親のギター店でアルバイトのような事をするようになっていた。父親と同じで、普段は無口な俺でもギター好きの客とはスムーズに話ができた。森沢ともそうだ。店に入って来た森沢を見た時は驚いたが、あいつが中学からギターをやってるのを知ると自然と話が出来た。
あれ、あいつギター弾けるのに……。
男からコーヒーを受け取った『いちか』が顔を上げた。
イチ……?
なんとなく似ている気がする。
バカな。
葛城はふと浮かんだ考えを即座に否定する。
イチと『いちか』は全然違う。
7年も前だからあてにならないが、イチはもっと声が高かった。それに何よりイチはギターを弾かない。
その時、ポケットに入れていた携帯が震えた。
電話だ。
葛城は携帯を取り出しながら、青年を見た。
「葛城さん」
青年の口が自分の名前を形作った気がした。
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