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大きな拍手が体育館を満たす。
つい先程まで行われていた演劇が終わったらしい。
幕内では早々にセットが取り払われ、代わりにドラムやキーボードなどの楽器がセッティングされていく。
「やっと俺達の出番だな」
ドラムの卓也が肩をブンブン回しながら近づいてきた。
「客は?」
「少し立ったが、ほぼ満席だ」
ベースの充の問に答えたのは、ボーカルの一輝だ。
「満席か。やる気出てきた」
「ハハハ、充らしいな。あれ、イチ、どうした?」
緊張で震えている一珂の肩に一輝が腕を回した。
「どうしよう、俺……」
「大丈夫。イチならちゃんとやれるさ」
「兄ちゃん……」
「そうそう、イッちゃんなら大丈夫だよ。観客なんてカボチャだと思えば楽勝だって。まあ正直、なんでカボチャに例えるのかは謎なんだけどさ。だって俺のカボチャのイメージはスーパーで売ってるカットされたオレンジので、あれと人間が結び付かない」
充が首をかしげると、
「ちげえよ。カボチャといったらハロウィンのお化けカボチャだろ」
卓也がつっこむ。
「え、それって逆に怖くない?お化けカボチャが客席に一杯って」
「ハイハイ、そこまで。逆に怖がらせてどうするんだよ」
「あ、イッちゃんごめん」
「悪かったよ」
一輝に怒られて、充と卓也が素直に謝った。
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