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数日の間山下の行動を探ってみたが、おかしな行動を取っている様子は見うけられない。
こうなったら谷田さんに直接聞くしかないか。営業での研修も明日で終わるし……等と考えていたら、当の山下と目が合ってしまった。
「葛城さん、どうかしたんですか?」
嬉しそうに笑いながら近づいて来る始末。
そう言えば何故かこいつになつかれていたんだった。
「いや別に。研修はどうだ?営業は厳しいだろ?」
「んー、別に」
「別にって……」
山下はさほど苦労した様子もなく、無邪気に首を傾けた。
ここ数日彼を監視していて改めて気づいたことは、岸田課長の目は確かだと言うことだ。
課長の見立て通り、山下は営業に向いていると言わざるを得ない。
ほとんどの新人が苦手とするアポとりも苦じゃないみたいでどんどん電話をかけるし、ビラ配りも受け取ってもらえる確率が高いから早く配ることができる。その上人の心にするりと入り込むのも年配の人に取り入るのも上手い。
岸田課長は山下が常務の甥だからではなく、彼の適正を見抜いて採用したのに違いない。
ただ流石の課長も、山下が恋愛にだらしない事までは見抜けなかったのだが。
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