mf《メゾフォルテ》

13/14
386人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
かちゃりと音がして、スーツから私服に着替えた葛城が戻ってきた。 「葛城君、着替え終わったんだ。ああ、大きさもぴったりだ。そういう格好も似合うね」 葛城………って、えっ……。 どん。 マスターの言葉に驚いた一珂は、高さのあるスツールから落っこちてしまった。 腰を強打して涙が浮かんだが、今はそんな事に構っていられない。 ………葛城さん。 熱狂の中、かっこよくギターを弾く横顔が頭に浮かぶ。 やっぱりあの人は葛城さんなんだ。 前から似ているなとは思っていたが、7年も前の記憶は曖昧で自信が持てなかった。けれど、名前まで同じとなると……。 「大丈夫?」 尻餅をついた一珂を心配そうに見つめる葛城の腕を、一珂がぎゅっと掴んだ。 「葛城さんですよね?」 「そうだけど……」 「俺……です。一珂です。森沢 一珂」 一珂が名乗ると、今度は葛城が目を見開いた。 「森沢って………まさかイチ?」 「はい、そうです。イチです」
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!