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かちゃりと音がして、スーツから私服に着替えた葛城が戻ってきた。
「葛城君、着替え終わったんだ。ああ、大きさもぴったりだ。そういう格好も似合うね」
葛城………って、えっ……。
どん。
マスターの言葉に驚いた一珂は、高さのあるスツールから落っこちてしまった。
腰を強打して涙が浮かんだが、今はそんな事に構っていられない。
………葛城さん。
熱狂の中、かっこよくギターを弾く横顔が頭に浮かぶ。
やっぱりあの人は葛城さんなんだ。
前から似ているなとは思っていたが、7年も前の記憶は曖昧で自信が持てなかった。けれど、名前まで同じとなると……。
「大丈夫?」
尻餅をついた一珂を心配そうに見つめる葛城の腕を、一珂がぎゅっと掴んだ。
「葛城さんですよね?」
「そうだけど……」
「俺……です。一珂です。森沢 一珂」
一珂が名乗ると、今度は葛城が目を見開いた。
「森沢って………まさかイチ?」
「はい、そうです。イチです」
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