f 《フォルテ》

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可哀想に一珂は夕飯も食べずに泣きつかれて眠ってしまった。 次の日、一輝が教師や一珂のクラスメートだけじゃなく近所の人にまで一珂を『イチ』と呼ぶようにお願いして回ると、みんな二つ返事で引き受けてくれた。 犯人探しの方はもっと簡単だった。一珂を苛めたのは一輝の同級生の3人組で、日頃から男女問わず人気がある一輝を妬んでいたらしく、それを一輝ではなく弟の一珂にぶつけてきたのだ。 一珂が友達と帰っていると家まで着いてきて、その間ずっと「いちかちゃん、遊ぼ。スカートはかないの?女の子だろ。いちかちゃんって可愛い名前だね」としつこくからかったらしい。 あいつら、見てろよ。 一輝達の小学校では4年生からクラブ活動に参加する。週に2回くらいだが、色んなクラブがあって楽しく活動している。 3人組は小4、小5と続けてミニバスに入っていてバスケが上手いと自慢していた。そいつらの鼻をへし折るために、一輝は彼らの得意なミニバスの試合を申し込んだ。 「俺が勝ったら弟にきちんと謝って、2度と関わるな」 「いいぞ。その代わり俺達が勝ったら、卒業するまでは森沢は俺達の奴隷だからな」 「ああ」 3人は一輝を見てヘラへラ笑った。 「ルールは3人対3人で、先に5点取った方が勝ちだ。将棋クラブの奴らが俺達に勝てるわけないだろ。バカなの?」
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