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「なんか慣れてるな?」
真山が感心して言うと、一珂ではなくおばさんが答える。
「そうなのよ。おばさんなんて未だにオロオロしちゃうのにイチ君は最初からあんな風に出来るのよ」
「料理は嫌いじゃないから」
照れくさそうに一珂が笑うと、おばさんも優しく微笑む。
「イチ君がいてくれて大助かりよ。ありがとうね」
「いえ」
「それに今日はこんなイケメンのお友達まで連れてきてくれて。イチ君だけでもすごいのに。材料足りるか心配たわ」
「俺はともかく確かに真山はイケメンだから。俺、果物の追加作りましょうか?」
「もう、イチ君たら」
「一珂、それ冗談だから」
2人が可笑しそうに笑うのを見ながら、一珂は何がそんなに可笑しいのかと首を捻る。
一珂の中で一番カッコいいのは葛城だが、無口で近寄りがたい雰囲気があるため、女の子達は遠巻きに眺めているだけで満足している気がする。もちろん一珂が知らないだけで、遊びに行ったり告白されたりしてたのかもしれないが。
彼女とかもいたんだろうな。
勝手に想像して落ち込みそうになり、慌ててネガティブな感情を追い払う。
今は真山の話だ。
葛城と違い優しくて気楽に話せる真山は、大学でも男女共に友人は多く、遊びや合コンに誘われたり告白されたりも頻繁にしている。現にさっき来た女子高生もチラチラ真山を見ていた。
密かに王子と呼ばれている真山が店先にいるだけでいつもよりも客が増えるのは当然の事だ。
「やっぱり果物追加しましょうか?」
「イチ君の真面目な所、おばさん大好き」
更に2人に笑われてしまった。
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