fff《フォルティッシッシモ》

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本屋にでも行くか。 駅に向かって歩いていると、大きな箱を抱えた風早が前から歩いてきた。 「こんな早い時間に珍しいね。森沢君の所に行ってたの?」 「はい」 「彼、丸井(まるい)果物店でアルバイトしてるんだよね」 「………そうです」 「何で知ってるのって顔だね。ご近所だし、店の果物はあそこで仕入れてるからね。丸井果物店のは品質が良くて安心して使えるんだよ」 カクテルには、果物を使う物が意外と多い。学生時代アルバイトしていたレストランでカクテルを出していたのだが、定番のレモン、ライム、オレンジだけじゃなく、イチゴ、さくらんぼ、葡萄、桃、スイカ、梨、柚子、みかん、きんかん等様々なフルーツを使っていた。 「丸井さんの奥さんが森沢君は優しくて良い子だって褒めてたよ」 「イチが聞いたら喜びます」 誉められたのは一珂なのに、何故か葛城まで嬉しく感じる。 「ハハ、葛城君が誉められたみたいだね」 「変、ですよね」 「変じゃないよ。誰だって自分の大切な人が誉められると嬉しく、けなされると悔しいものだからね。それだけ森沢君が葛城君にとって大切な人という証拠だよ。おっと」 「持ちますよ」 風早が落としそうになった箱を受けとる。
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