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一珂を見る葛城の瞳はまるでガラス玉のようで、感情を一切読み取ることができない。
真山から距離を取った一珂が、不安そうに葛城を見上げた。
「葛城さん……」
「もう帰れる?」
「はい、あの……」
爪が手の平に食い込んで痛い。
「ギターをひく大切な指だろ。大事にしろ」
ふっと表情を緩めた葛城は、一珂の手を取り指を開くように促した。
傷ついたのは葛城さんの方なのに、俺の事をこんなに気づかってくれるなんて。優しすぎるよ。葛城さんが俺の事を大切に想ってくれるように、俺も葛城さんを大切にしたい。
「ごめんなさい」
「え?」
「もうあんなことしない。これからはもっとちゃんと考えて行動するから、俺のこと嫌いにならないで」
ああ、泣きそうだ。
「バカだな。俺がイチを嫌いになるわけないだろ」
「本当?」
「本当だ」
「……良かった」
葛城の大きな手に頭を撫でられると、一瞬で体中が熱を帯びる。
「一珂、好きだよ」
「俺も好きです」
2人の世界に浸っていると、今度は真山に名前を呼ばれた。
━━真山の事すっかり忘れてた。
一珂を気づかって離れようとする葛城に「大丈夫」と告げると、葛城は「分かった」と一珂の好きにさせてくれる。
「2人はどういう関係?」
「俺は葛城さんと付き合ってる」
「イチっ」
安心させるように葛城に笑いかけたが、内心は不安で一杯だ。
真山にどう思われるかを考えると正直怖い。けれど
嘘をついたり誤魔化したりして葛城を傷つける事の方が何倍も怖いんだ。
「それは恋人として?」
「そう。俺と葛城さんは恋人として付き合ってる」
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