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軽蔑した、あるいは戸惑って揺れる瞳を見たくなくて目をそらしそうになる。
葛城を悲しませたくないというのは本心だけれど、真山にも嫌われたくないと思ってしまうのは我が儘だろうか……。
真山は人の多さに戸惑っていた入学式の日から仲良くしてくれた大切な友達だ。このまま失いたくない。
勝手な自分に呆れてフッと笑いが漏れた。
「一珂は相変わらずバカだな」
「えっ?」
「こんな事で俺がお前から離れるわけないだろ」
「真山……いいの?」
「俺がダメって言ったらその人と別れるのか?」
葛城と別れる?
一珂は首を勢いよく振った。
「別れない」
「じゃあ、俺と友達止める?」
「それもやだ………」
「じゃあ、それでいいじゃん。その人と付き合っても俺たちの仲は変わらない 、そうだろ?」
「うん」
「だから何も心配するな」
優しい笑顔に強ばっていた表情が緩んだ時、真山が爆弾を落とした。
「俺は良かったと思ってる。一珂がその人と付き合ってるという事は、俺にもチャンスがあるという事だよな?」
「チャンスって、真山何言ってるの?」
「お前の幸せを潰すようなことはしないけど、俺も狙ってるってことは意識しといて」
お疲れと片手を上げて去っていく真山を呆然と見つめていると、葛城が一珂の頭をポンポンと撫でた。
「いい友達だな」
「はい」
「だけど、あいつには渡さないから。イチは俺のものだ」
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