393人が本棚に入れています
本棚に追加
赤くなった一珂の頬を葛城がツンツンとつつく。
「俺の気持ちも忘れるなよ。さあ、飯行くか。腹減ったからがっつり食べたいな」
「じゃあ、焼き肉行きたいです」
「よし決まり」
こんな風に葛城さんと並んで歩くのは初めてかもしれない。いつも少し前を歩く葛城さんの背中を見つめていたのに。
俺がこんなカッコいい人の隣にいられるなんてまだ実感がわかない。真山と同じでこの人も女性にすごくモテるんだろうな。バンドを組んでいた時、彼を遠巻きに見つめる女子生徒の視線を嫌と言うほど感じていた。制服も似合っていたが、スーツは彼を更にカッコよく見せてドキドキが止まらない。
この場所を、彼の隣を誰にも譲りたくはないな。
いつか俺も葛城さんは俺のものだと堂々と言えるようになりたい。
「あいつの事考えてるのか?」
「あいつ?」
「………真山」
「違いますよ、葛城さんの事を考えてました」
「俺の事?」
「言わないとダメですか?」
「うん、聞きたい。教えないとイチには肉やらないで野菜ばっかり食わせるぞ」
何それ、子供みたいで可愛い。
「……カッコいいなって思ってました。今は可愛いなとも思ってますが……あれ、耳赤いですよ」
「………うるせ」
ぷいとそっぽを向く姿が拗ねた子供みたいだ。
「ぷっ」
大人だと思っていた葛城にも子供っぽい一面があるのが分かり顔がにやける。
「色んな葛城さんが見れて嬉しいです」
「色んな俺か……。じゃあイチももっとありのままの自分を見せてくれ。そうだ、酔った時のタメ口、あれは可愛かった」
最初のコメントを投稿しよう!