ffff《フォルティッシッシッシモ》

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葛城と再会してから3ヶ月。初めて祝ってもらう誕生日に、一珂はプレゼントでもケーキでもなく「葛城さんのギターを聞かせて欲しい」とねだった。 「そんな事でいいのか?」と返した葛城に「それがいいんです」と強く言われ頷いたものの……。 俺、ちゃんと弾けるのかと葛城は心配になる。 大学時代はそれなりに弾いていたが、就職してからの1年以上掃除とチューニングをするくらいでギターにほとんど触ってない。 今の部屋に引っ越してからオブジェのようになっていたギターを手に取り、誕生日までの10日間暇を見つけては一生懸命練習した。 何とか体裁を整えた葛城は、一珂の誕生日に小さなスタジオを借りた。 「すごい」 初めて見るスタジオに、一珂は興奮して目をキラキラ輝かせている。 高校時代はスタジオを借りる金なんてなくて、学校の軽音部の部室か、防音になっている一珂のピアノ室を借りて練習をした。 ドラムの卓也だけは別練習だったが、ストイックなスポーツマンのあいつはドラムにも妥協は許さず、親戚の家にあるドラムセットで黙々と練習していたみたいだ。
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