ffff《フォルティッシッシッシモ》

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ギターだけでもドキドキなのに歌まで歌えるか不安だ。だけど、葛城の期待を込めた瞳に何とか応えたくて一珂はゆっくりと頷いた。 大きく深呼吸し、綺麗に合わさったギターに歌詞を乗せていく。 歌いだしはまあまあ、だけど……あ、緊張のせいか高音が綺麗にでない。 そう言えば路上で初めて歌った日もこんな風に緊張してたな。わざわざ立ち止まって聞いてくれる人なんて全くいなかったけど、失敗する度に恥ずかしくてもう止めようと何度も思った。その度に記憶の中にある葛城の音が一珂に勇気をくれた。 それは今も変わらない。 昔よりも艶やかな音が一珂をやんわりと包みこみ、気持ちが徐々に落ち着いてくる。 もう大丈夫。 いつも通りの声が出せるようになり、安心した一珂は葛城にそっと視線を投げた。 「今日は俺だけのために歌ってほしい」って葛城さんは言ったけど、ずっとそうだったんだよ。葛城さんに会いたい、もう一度彼のギターが聞きたい。 届け、届け、届け。 心の中でずっと叫んでいた。 だから、目の前に葛城がいることが未だに信じられない。 まさか夢じゃないよね。 最後の音を奏でた後、現実だと確かめたくて一珂は葛城に手を伸ばした。
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