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貸しスタジオから出るときに誰かにぶつかりそうになり、葛城に支えられた。
「すみません」
「いえ、あれあんた……」
「行くぞ」
葛城に促され料金を払って表に出ると、途端に背中を汗が流れ、額にも汗が滲む。
大して役にたたないと思いながらもパタパタと手で仰ぎながら一珂が空を見上げた。
「いい天気ですね」
「ああ、眩しいくらいだ」
友達の距離より少しだけ近くに並んで歩き、大通りでタクシーを止める。車内はひんやりとクーラーが効いていて気持ちがいい。
行き先を告げてシートにもたれると、運転席から見えないように葛城が手を繋いできた。
外で手が繋げないのをもどかしく感じていた一珂が葛城に微笑みかけ、同じように握り返す。
季節は夏。
あの日のように暑い日々がこれから始まろうとしていた。
《終わり》
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