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 呼子の音が長く引いている。残響はなかなか消えない。  紫重(ゆかりえ)はため息と微笑を同時に洩らす。  飛馬が促すように空を振り仰ぐ。 「そうね、行こう」  紫重は弾みをつけて飛馬にまたがった。  今日の飛馬(ひめ)には、鞍も鐙もない。飛馬乗りたちは手綱を締め、振り落されないように飛行するのが今日の課題だった。
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