2

2/6
前へ
/17ページ
次へ
 手本のような挨拶をすると、一宮にさえぎられた。 「約束は果たせそうか?」 「わかりません」  紫重は間髪入れずに答えた。  年頭に宮中で飛馬始が行われる。別寮の上位三名が参内し、拝舞する。紫重は三席に入らなければ、一宮に仕えることになっている。 「呼ばれもせでここに参るとは、何ぞあったか?」  一宮は恬淡としている。紫重は彼女の下で働くことはいやではない。 「何か面白いことがあったとうかがいました」 「はっきりせぬな」 「……教官が宮中で何かあったようだとお気にかけておいでで……」  ためらいがちに彼を引き合いに出す紫重の頬が上気した。 「飛馬の五位が?」  一宮は含み笑いをする。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加