0人が本棚に入れています
本棚に追加
手本のような挨拶をすると、一宮にさえぎられた。
「約束は果たせそうか?」
「わかりません」
紫重は間髪入れずに答えた。
年頭に宮中で飛馬始が行われる。別寮の上位三名が参内し、拝舞する。紫重は三席に入らなければ、一宮に仕えることになっている。
「呼ばれもせでここに参るとは、何ぞあったか?」
一宮は恬淡としている。紫重は彼女の下で働くことはいやではない。
「何か面白いことがあったとうかがいました」
「はっきりせぬな」
「……教官が宮中で何かあったようだとお気にかけておいでで……」
ためらいがちに彼を引き合いに出す紫重の頬が上気した。
「飛馬の五位が?」
一宮は含み笑いをする。
最初のコメントを投稿しよう!