味噌ラーメンの塩分量

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「ミヤマさんはさ、俺より、ソノダが好きなんだよ。」 ミヤマと、ソノダ。 このせまい島国の中で、量産されている苗字のひとつにすぎないと、思えるくらいに他人事でいたかった。 その文字の並びに動じないくらい、無関係でありたかった。 「……叫んでも可愛い女子になったら、良かったのかな」 「……かもな」 「ソノダくん、清楚な子が好きって言ってたからさ、」 「うん」 「わたし、髪巻くのやめてストレートにして、柔軟剤もジャスミンの香りに変えたんだけどさ、」 「うん」 「……ソノダくんが、好きになったのは、ミヤマさんだった…っ」 じわりと滲んで、輪郭を伝う間に、悲しみも後悔も吸い込んでくれたらいいのに。 ソノダくんなんて、ちょっと友達と揉めて、ちょっと人間不信になってる時に、ちょっと支えてくれたような人、あっさり一雫の塩分に溶かされてしまえばいいのに。 「…辞められたら、いいのにな。て、言ってもどうせ、無理なんだろうなあ。」 「…そう、だね」 「たぶん、過去に戻ってやり直せたって、俺はミヤマさんに惚れるし、お前はソノダに夢中になるんだ」 「……うん。そうだね。むかつくなあ、ほんと」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加