ありがとう、さよなら

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こうやって空を眺めるのは嫌いじゃない 特に夜空が好きだ 夜は寂しいと言う人も居るが、僕は寧ろその寂しさすら魅力の一つと思える 月が昇れば空は昏く、けど鮮やかに彩り、澄み渡る 月は脆く、儚く、今にも崩れ落ちてしまいそうだ だが、幻想的なまでに綺麗で、美しく、華やいで見える そんな感傷に浸りつつ、ふと視線を下げてみる するとそこには、漆黒に覆われた大地があった ここには明かりなんてものはない 唯一夜空から降り注ぐ微かな明かりさえ、届いていないのではないだろうか そして、僕は歩き出す 真新しい未知へと 一歩一歩しっかりと踏みしめて 歩みを止めては夜空を見上げる 幾度となくそうしてきたように どれほど経っただろう ふと、あることを考える どうすればあの月に辿り着けるのだろうか 何故、自分はここにいるのだろう 光が届かないように、僕の手も届くことはないのに 一体、なにを求めているのだろうか どこで間違えたのだろうか 幾度となく繰り返してきた自問自答 それも今日で終わりだ 答えなんてものはないのかもしれない 遥か遠くを見遣り、呟く 「ありがとう、さようなら」 振り返り、仰向けになる 直後、全身に浮遊感が漂う 目前には相変わらず夜空が見える 夜空を眺め、見遣り、呟く 「あぁ、やっぱり綺麗だな…」
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