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「ねぇ、もし今日が終わって永遠に明日が来なかったらどうする?」
そう言って彼女は僕の方を向いた。
ここには僕と彼女の二人だけだ。
木漏れ日の中の彼女の顔はよく見えない。
「そんなこと起きないよ」
「もしもの話なんだけど…」
彼女はそう言って苦笑し、その後何もなかったように他愛のない話をしだす。
今日もいつもと変わらない時が過ぎていく。この樹齢幾百年にも達するであろう大樹も未だ僕と彼女しかその存在を知らない。ここで彼女と過ごす時間はとても温かくて、心地よくて、ずっとこのまま一緒に居たいとさえ思えた。
時間はあっという間に過ぎる。
もう辺りも夕色に染まりそうだ。
「また、いつかここで会えるよね?」
彼女は不意にそんなことを言ってきた。
夕日に照らさた彼女の顔は相変わらずよく見えなかった。
何故彼女がこんな言い方をするのか不思議に思いつつ首肯する。
「約束だよ。いつかまたここで…」
夕日に照らされた彼女はどこか脆く儚げに見える。その姿に僕は胸を締め付けられると同時に愛おしさを覚えつつ、ひどく悲しく思えた。
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