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雪の精との出会い
「うう、寒い……」
とある雪山に俺は訪れていた。大量に吹いている吹雪を浴びながら雪山を彷徨っている。
俺の名前は伊藤康太(いとうこうた)。
先月まで都内の証券会社で働いていたのだが、先月会社をクビになった。
俺は今まで営業として、日々身を粉にしながらも一生懸命働いていた。
上司から叱責を受けても、顧客に無理難題を吹っかけられても仕事だと割り切り必死に働いていたのだが、不況の煽りを受けてクビを宣告されてしまったのである。
普通の人間であれば「よし! また頑張ろう!」と再就職先を探すところであるが、俺はなんだかもう疲れた。
全てを投げ出したくなった俺は自殺を企てることにした。
しかし、首をくくって死ぬのも、高いところから飛び降りて死ぬのも、火を浴びて死ぬのも無理な俺は『凍死』を選ぶことにした。
寒いところで眠りように死ぬ――なんとも理想的ではなかろうか。
「寒い……寒いよお……」
身体の震えは止まることを知らない。絶え間なく振り続ける雪のせいで視界がぼんやりとしてくる。
凍死は楽な死に方なんてのは甘い考えであったことに今更ながら気づく。
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