第七章「お姉様方のご意向」

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ーー午後二時を過ぎても、相変わらずフードコートは人で溢れかえってた。けどさっきよりは少しだけ余裕があって、何回かぐるぐる回って比較的すんなり席を見つけられた。 確保できたのは四人席だから、相川さんを入れると一人座れない計算。…まぁその一人は99%俺だから、何の問題もなし。 ねぇ達の中に相川さん一人残してきちゃってるから、兎に角早く戻らないと。 Tシャツの上に羽織ってた薄手の麻のシャツを席に置くと、早足で人混みをぬいながらさっきの場所へと戻った。 「あっ、相川さんっ」 早足とはいえ、結構急いだので軽く息切れ。両膝に手をついて肩で息をする。 「大丈夫!?何にもされてない!?」 「は?何それ」 怪訝そうな相川さんの横で、千里ねぇと渥美ねぇが抗議の声をあげる。 「南、今度はちゃんと席取ってきたんでしょうね」 「取りました!今度こそは取りましたとも!」 胸張って言ったけど、誰も褒めてくれなかった。くそぅ。 「じゃ、行こっか小花ちゃん」 渥美ねぇが、軽く相川さんの腕をとって歩き出す。 「はい」 相川さんの表情は相変わらずクールだけど、別に嫌そうじゃない。てか、さっきは困惑してたけど今はそれもない。 え、何で?いつの間に仲良くなったの?え、てか相川さん女子と仲良くなれるの? まぁ、仲良くなったっていうよりはねぇ達の強引さについていけてる、って言った方が正しいかもしれない。 けど、嫌なことは嫌ってはっきり過ぎるくらい言っちゃう相川さんが何も言わないってことは、少なくとも嫌ではないってことだろう。 「南、どこにとった?」 「あ、フードコートの右端の方!俺のシャツ置いてるっ」 「オッケー。あ、南荷物宜しくー」 優希ねぇも千里ねぇも、やたらと相川さんにベタベタしながら歩いてく。それもなぜか、拒否しない相川さん。 足元に置いてある結構な量の紙袋。それを誰一人として持とうとせず、さっさと行ってしまった。 え、えぇぇぇぇ。これ、俺は一人で持つのかぁ。
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