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「あ、相川さん?」
「何」
「ハッキリ言った方が良いよ?」
「何を」
な、何をって貴女…勝手に泊まることにされてるんだよ?
涼しげな表情の相川さんに、俺は焦り気味に問いかける。
「渥美ねぇの言ったこと、気にしなくて良いから」
「泊まるって言ってたこと?」
「そう、それ!」
当ててもらえたことに、若干テンションが上がった。相川さんとの会話は、大体噛み合わないからな。
「渥美ねぇ、調子乗ってつい言っちゃっただけだから!」
「おい、南」
あれ~、何かドスの効いた声で呼ばれた?いや、聞き間違いだ、無視しよう。
「だから、相川さんは気にせず…」
帰って大丈夫だから、俺がそこまで口にする前に
「良いの?」
相川さんが先に意味不明な言葉を口にした。
「…え?何?」
真顔で、何を言ってんの?
「だから、私泊まっても良いの?」
何でもないことみたいに、とんでもないことを口にする。
「いや、ダメでしょ!」
普通に考えて、ダメに決まってる。ていうか、良いとかダメとかの前に貴女が嫌でしょ!
俺がハッキリと否定の言葉を口にした瞬間、早乙女家の四つの口が一斉に開いた。そこからは、合わせると尋常じゃないくらいの文字数であろう言葉が放たれる。
「ちょっと南、アンタ勝手なこと言ってんじゃないわよ」
「そうよ、誰もアンタの意見なんか聞いてないから」
いや、今相川さん俺に聞いたじゃん…
「小花ちゃんは私達の友達なんだから、この家に泊めるのに何の問題もないわけ。分かる?」
「分かんない…」
これぞ正に、蚊の鳴くような声。だって怖いんだもん。ねぇ達だけじゃなく、母さんまで文句言ってるし。
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