第八章「どうしてこうなった」

3/28
229人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
「あ、相川さん?」 「何」 「ハッキリ言った方が良いよ?」 「何を」 な、何をって貴女…勝手に泊まることにされてるんだよ? 涼しげな表情の相川さんに、俺は焦り気味に問いかける。 「渥美ねぇの言ったこと、気にしなくて良いから」 「泊まるって言ってたこと?」 「そう、それ!」 当ててもらえたことに、若干テンションが上がった。相川さんとの会話は、大体噛み合わないからな。 「渥美ねぇ、調子乗ってつい言っちゃっただけだから!」 「おい、南」 あれ~、何かドスの効いた声で呼ばれた?いや、聞き間違いだ、無視しよう。 「だから、相川さんは気にせず…」 帰って大丈夫だから、俺がそこまで口にする前に 「良いの?」 相川さんが先に意味不明な言葉を口にした。 「…え?何?」 真顔で、何を言ってんの? 「だから、私泊まっても良いの?」 何でもないことみたいに、とんでもないことを口にする。 「いや、ダメでしょ!」 普通に考えて、ダメに決まってる。ていうか、良いとかダメとかの前に貴女が嫌でしょ! 俺がハッキリと否定の言葉を口にした瞬間、早乙女家の四つの口が一斉に開いた。そこからは、合わせると尋常じゃないくらいの文字数であろう言葉が放たれる。 「ちょっと南、アンタ勝手なこと言ってんじゃないわよ」 「そうよ、誰もアンタの意見なんか聞いてないから」 いや、今相川さん俺に聞いたじゃん… 「小花ちゃんは私達の友達なんだから、この家に泊めるのに何の問題もないわけ。分かる?」 「分かんない…」 これぞ正に、蚊の鳴くような声。だって怖いんだもん。ねぇ達だけじゃなく、母さんまで文句言ってるし。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!