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いつものスーパー毒舌キャラは何処へやら、急に捨てられた子犬みたいな瞳で寂しげに俺のこと見ちゃったりなんかして。これじゃあ、俺が完全に悪者じゃん。
ていうか、相川さんが友達欲しいってこと知ってるのはこの中では多分俺だけで、そんな俺が折角彼女が友達とのイベントっぽいことが出来るチャンスを潰しちゃうって…どうなんだろう。
いや、理屈で言えば完全に俺が正しい筈。うーん、けど俺どうこうの前に、ねぇ達の友達としてこの家に泊まるなら、別に何の問題もない…のか?
何がなんだか良く分からなくなってきた俺は、もう「相川さんが嫌じゃないなら良いか!」という結論に辿り着いた。
「ねぇ達がそんなに言うなら、もう反対しないよ」
「え、何?」
「何?じゃなくて、相川さん泊まっても良いよって言ったの!」
折角俺が、考えに考え抜いて答え出したのに!
「は?だから南の意見なんか最初から聞いてないけど」
優希ねぇの一言に、俺は固まる。
「そうそう。誰も聞いてないよ」
「私、最初から言ったじゃん。“小花ちゃん泊まるからね”って。泊まって良い?なんて聞いてないじゃん」
優希ねぇに続き、千里ねぇと渥美ねぇ。 固まった俺は、見事に割れて粉々に粉砕された。
「南、アンタ父さんと夕飯の買い物行って来て。今すぐ」
そして母さんの一言で、サラサラと空中に舞い散りました。終わり。
「仕方ない、行こうか南」
…何でアンタはちょっと嬉しそうなんだよ!父さんがそんなだから、早乙女家では男は塵同然なんだろ!
って叫びたいけど、相川さんがお泊りを嫌がっていないと知った今、もう下手に反対はできない。
この前、相川さんには散々お世話になったのに、ここで俺が相川さんの初体験を邪魔する訳にはいかない。
…何か、ヤラシイ言い方だな。最低、俺。
こうして抵抗も虚しく俺は敗れ、ていうかそもそも意見聞かれてなかった訳だから勝負にすらなってないけど、まぁそんな訳で相川さんは俺の家に泊まることになったのでした。
…もう嫌、何も考えたくない。取り敢えず買い出し、行こう。
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