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「ねぇ、早乙女君」
「何!?」
俺は今、俺の中のもう一人の俺と戦うのに忙しいんだけど!しかも今は全身ハッキリ見えちゃってるし、ホント困るんだけど!そういうの。
「早乙女君の部屋、見せてよ」
「…は、はい?」
アナタハ、イッタイナニヲイッテイルノデスカ?
「ちょっとだけ、入っても良い?」
「ダメです」
相川さんの問いかけに、俺は食い気味で答えた。
只でさえ、今まで感じたことない訳わかんないもんがブワッて身体中に充満してて死にそうなのに、その上部屋に入りたいだと?良い加減にしろ!
「何でよ」
「何でもです!てか何、その部屋着!ショートパンツっておかしいでしょ!足出てるじゃん!」
早口でまくし立てる俺を、相川さんは怪訝そうな顔で見つめた。
「渥美さんに借りたんだけど。何でダメなの」
「そ、それは…寒いからだよ!」
「もう夏だよ」
「でもダメ!ダメったらダメ!」
「そんなに見られたくないもんがあるんだ」
「ない!」
あの漫画の存在はもう知られてるし、ていうか自分から暴露したし、他にやましいものはない。
「じゃあ、良いじゃん」
「ダメっ!」
何がダメか俺自身も良く分かんないけど、ダメ!
「…」
ただ黙って、拗ねるように視線を逸らした相川さん。それからまたすぐに、逸らした視線を俺へと戻した。
「…今日、偶然とはいえ休みに早乙女君に会ったのに、全然話してない」
「…そうですかね」
「ちょっと位、話したいと思ったって良いじゃん」
拗ねたような、怒ったような、ちょっと寂しそうな。そんな様子の相川さんを目の前に、俺は困り果てた。
…ホント、これ天然でやってるからタチ悪いよ。計算の上だったら、それはそれでタチ悪いけど。
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