第八章「どうしてこうなった」

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…そうだ、絶対そうだ。寧ろそれ以外に考えられない。この「相川さんが誰かに押されてしかもドア開かないんですけど」事件の犯人、絶対あの人しか考えられない。 いや、正確にいえば「あの人達」ですね。 華麗かつ的確な推理によって犯人を導き出した俺は、思いっきりドアを叩こうと拳を握った。 「何、どうしたの?」 はてな顔の相川さんに、ちょっと笑ってみせる。 「大丈夫、すぐにドア開くから」 握った拳と同時に、大声が出せるように息を吸い込む。そして拳を振り上げてドアに打ち付けようとしたその時ーー 「早乙女君、電話鳴ってる」 冷静に俺のスマホを差し出してきた相川さんによって、俺の拳は空を切った。…もう、思いっきりドア叩いて叫び倒してやろうと思ったのに。 相川さんからスマホを受け取って画面を確認すると「渥美ねぇ」と表示されている。…ちょうど良い、滅茶苦茶文句言ってやろう。んで、何でこんなことしたのか問い詰めてやる。 いつもはけちょんけちょんにやられる側だけど、今回ばかりはそうはいかないぞ。何てったって相川さん巻き込んじゃってるからね。それはもう怒ってますよ、南君は。 満を持して画面をスワイプ。こんな訳分かんないことしでかした一人であろう渥美ねぇに、絶対文句言ってやる。そう決意してスマホを耳に当てる。 「ちょっと、渥美ねぇ…!」 「あ、南?先に言っとくけど、ドア叩いたり大声出したりしたら、あの事バラすから」 しれっとした声でそう言われた俺は、瞬時に石になった。それはもう、「ピシピシ」的な効果音付きそうな感じ。
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