第八章「どうしてこうなった」

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無言、ていうか唖然て言った方が正しいかもしれない。言いたいことあり過ぎて、何も言えねぇ。相川さんを連れて俺の部屋から出て行く渥美ねぇの手元をふと見ると、短めの突っ張り棒。 …成る程、あれを俺のドアと目の前の廊下の壁に突っ張らせて、開かないようにしてたって訳か。…チクショウ、誰だよ俺の部屋のドア外側に開くように作った奴は! ここであんまりワーワー言うと、相川さんと二人っきりだったことがそんなに嫌だったのかと思われちゃうから、口には出さなかった。 嫌とは違うけどさ…相川さんが可哀想でしょ!半ば強引に泊まらされる挙句、好きでもない男と部屋に閉じ込められてさ。俺がヘタレじゃなかったらどうするつもりだったんだ、全く。良かったよ、俺がヘタレで。 部屋を出る直前、相川さんが俺を横目でチラッと見る。 「?」 何か言いたいことがある?そう思って声をかけようとしたけど、その視線はすぐに逸らされて、渥美ねぇと千里ねぇと一緒に部屋から出て行ってしまった。気のせい、だったのかな。 「みぃなみぃ~、今日は一緒に寝ようかぁ!私の可愛い南ちゅわぁ~んっ」 「ち、ちょっ、優希ねぇまだ居たの!?てか辞めて!抱き着かないで!く、くさっ!酒くさっ!」 相川さんが来てるのにこんなに呑むとか、アンタに常識ってもんはないのか!? 必死に優希ねぇを引き剥がそうとしてると、様子が急変。 「てめぇ…さては南のフリした禿げ部長だな!?家まで何しに来やがったぁ!成敗してやるっ」 ぐ、ぐえぇぇぇ…し、死ぬ…!首っ、首絞まってる…! 「か、かはっ…だ、誰か…たす、助けて……っ」 「こぉのぉ~、観念しろぉっ」 ーーこうして優希ねぇが力尽きていびきをかき始めるまで、俺は首絞められながらも部屋中を逃げ回ったのだった。チクショウ、誰も来ない!酷い…!
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