第十一章「いざ尋常に勝負」

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「も、もうこの話は良いから。う、魚住先生からはまだ返信来てない?」 咄嗟に、話題を変える。これ以上は、ダメだ。前なら普通に可愛いとか言えてたけど、好きって自覚してからは気軽に言えなくなってしまった。 一回可愛いって思っちゃうと、もうそれしか頭に浮かばない。また変なことを口走ってしまわないように、他の話題で相川さんをいつもの調子に戻そう。 俺の作戦はどうやら成功したようで、俺の言葉を聞いてスマホを確認する相川さんの雰囲気は、いつものクールでポーカーフェイスに戻ってた。 …それはそれで、寂しい。なんて、バカか俺は。 「あ、来てる」 冷静にスマホを差し出す相川さんに、俺も平常心を装いながらそれを受け取った。 画面を確認すると、「分かりました。明日の放課後、図書準備室で」とだけ返信が来てた。至ってシンプルで当たり障りのない文面だ。 こっちも、シンプルかつ丁寧に「分かりました、よろしくお願いします」とメッセージを返した。相川さんのキャラっぽくないかもだけど、そこはまぁ仕方ない。喧嘩腰で言って警戒されたら元も子もないからね。 「…これで、決戦の準備は整ったね」 脳内相川可愛いフィーバーも、大分落ち着いてきた。 「決戦って、大袈裟」 「良いの。俺が勝手にそう思ってるだけ」 軽くガッツポーズすると、相川さんは呆れ気味に笑った。 「ほら、早く食べなよタルト」 半分以上残ってる俺のお皿を、指差す相川さん。こ、この俺が五分以内にスイーツひと皿を食べきらないなんて…!なんて凄いんだ、恋の力は。 思いっきり頬張ると、ベリータルトはさっき食べた時より甘くて、ちょっと酸っぱい気がした。 ーー兎にも角にも、勝負は明日。取り敢えずの方向性は、見定めておかないと。頑張ろう、自分の為にも。
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