第十四章「それぞれの、好きって気持ち」

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何とも言えない顔しながら、納得してるようなしてないような瑠衣。だけど俺は、謎の興奮状態だった。…冷静に考えれば、時期早めてフッたこと軽口で咎められて喜ぶとか、最低か俺。 「ご、ごめん急に!けど初めて言われたから嬉しくてさ。まぁ大した努力してないのにドSになろうなんておこがましいだろうけど」 「…ドSって、努力してなるものなのか」 「瑠衣が初めてだよ、ありがと!」 若干頬っぺがピクピクしてるような。 「お礼言われる意味が分かんないけど、南が嬉しそうなら何でもいっかもう」 瑠衣はそう口にして、 「さっきは受け入れられないって言ったけど、南の気持ちは分かったから。受け入れる、とはちょっと違うけどちゃんと受け止めるよ」 言い終わって、キュッと口を結んだ。 「瑠衣…」 また、胸がギュッとなる。 「今までと同じように…はちょっとキツイけど取り敢えずチャレソンは応援してもらおうかな」 「す、する!めっちゃ応援する!何なら横断幕作る!」 拳を握り締めた俺に、瑠衣はフフッと笑った。 「それは勘弁かな。南、すぐ熱くなるんだから。そんなんじゃドS無理だよ」 「そ、そうかな」 「ていうかドSって、南の良いとこ全部潰しちゃう気がするけど」 そこは深く考えたことなかったけど、真逆って意味ではそうなのか…? 「まぁ、応援してるよ。頑張って」 自然に微笑んでくれた瑠衣が可愛くて、そしてそう思ってしまった自分をちょっと殴りたくなって。 そんな気持ちを隠しながら、俺も「ありがとう」ってちょっと笑って返した。 種類が違うだけで、人を傷付ける。…好きって、難しくて残酷だな。なんて、 思う資格はないのかもしれないけど思ってしまった。
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