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「…別に怪我してないから」
口調にはさっきの力強さがない。意外と嘘が下手なタイプなのかも。そう思うと、ちょっと強気になれた。
「なら、ジャンプしてみてよ。できたらもう何も言わないから」
できる筈ないことは、分かってる。その子は何とも言えない表情で黙り込んだ。
「できない?できないならやっぱり怪我してるってことだよね?痛い?さっきの先輩達にされたの?」
「…違う」
「じゃあ、元々足が悪い?」
「それも、違う」
じゃあ、何だろう。まぁ、何にせよ元々足が悪いわけじゃないなら、怪我してるんだ。歩き方見ただけで分かるくらいだから、結構酷いのかも。
「保健室行こうよ。まだ空いてるだろうし」
今は放課後だけど、この時間ならまだ保健室の先生は居る筈だ。取り敢えず、そこに連れて行くのが一番良いだろう。
「はい、俺の肩掴まって」
捉まりやすいように少し屈んで右肩を突き出す。男子の中では小さめの俺だけど、彼女とはそれなりに身長差があった。
「え、やだ」
しかめっ面で拒否される。
「嫌でも我慢してよ。ほんとはおんぶとかしてあげたいけど、正直自信ないから」
こんな時、理人なら軽々お姫様抱っことかしそう。けど、俺がしたら多分落っことしそうだし。
「…」
肩を突き出して、約十秒。一向に掴もうとしない彼女に、俺は痺れを切らした。
「ちょっと!そんな嫌なの?シャツ洗ってるから汚くないし、今そんな汗かいてないから大丈夫だって!」
「そういうんじゃない!もう、良いからどっか行ってよ!」
「行かない。無理に動かしてたら余計酷くなるかもじゃん。肩貸すくらいじゃ意味ないかもだけど、しないよりマシでしょ」
ここまで言っても、まだ強情なその子。あー、もう!
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