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俺は彼女が右肩に掛けていたカバンを引っ手繰るようにとった。予想外だったのか、彼女は驚いている。
「ち、ちょっと、返しなさいよ!」
「保健室着いたら返すから、早く掴まってよ。このままじゃ俺も帰れないじゃん!」
「だから、私のこと放って勝手に帰れば良いでしょ!」
「そんなことしたら、後味悪いじゃん!俺は俺の為にしてるだけなんだから、良いのっ!」
ちょっと強引過ぎる気もしたけど、強情な彼女に俺もついムキになってしまった。カバン獲ったのは、やり過ぎだったかな…
「…分かったわよ」
根負けしたのか、溜息交じりにそう言って俺の肩に手を乗せた。
…何だこの感じ。熊手懐けるとこんな気持ちになるのか?なんとも言えない満足感を感じながら、できるだけゆっくり歩く。
「アンタって、ホントお節介なやつ」
「良く言われる」
「バカだし」
「それも良く言われるよ!」
ムキになって言い返す俺に、彼女はそれ以上何も言わなくて。俺も、黙った。
「…肩だけでも、結構重いね」
「黙れ、ひ弱」
なんて悪態吐きながらも、結局保健室に着くまで彼女は俺の肩を離さなかった。…寧ろ、掴み過ぎて指食い込んでる。痛い。
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