第三章「奇妙な関係」

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「相川さん、下の名前は何て言うの?」 「…小花」 「へぇ、可愛いね」 素直な感想を口にした途端、ジト目で睨まれる。え…俺なんか変なこと言った? 「どうせ、似合わないって思ってるんでしょ」 「え、思ってないよ」 本当に、何も考えず思ったことを口にしただけだ。 「可愛い名前だから、そう言っただけだよ。相川さんにピッタリだね」 ニコニコしながらそう口にする。見た目とね…とまでは流石に失礼だから言わない。ていうか、恥ずかしさとかそういうの俺にはあんまりない。寧ろ思ったこと何でも口にするから、良くねぇ達に怒られる。 「…あっそ」 そう言って目線を自分の足に巻かれた包帯に向けた相川さんは、それから何も喋らなくなった。俺もそれ以上喋ることもなくて、暫しの沈黙。 そういえば、相川さんって何組だろう。ふと湧いた疑問を口にしようとして、目の前で聞こえる車のエンジン音に気付いた俺。それは相川さんも同じだったようで、下に向けていた顔をパッと上げた。 黒のミニバンがハザードを点けながら俺達の近くで停車した。運転席のドアが開き、男の人らしき人が降りてくる。 「来た」 「あ、あれ相川さん家の車?じゃあ、お父さん?」 俺がそう言うと、相川さんは「兄ちゃん」とお父さんであることを否定した。兄ちゃんが迎えに来てくれるなんて、兄妹仲良いんだなぁ。 …良いなぁ、兄ちゃん。 なんてぼんやり相川さんのお兄さんに目を向けて、俺は驚愕した。 こ、この人はーー 〝ドSな彼氏に夢中過ぎて困ってます″のヒーロー、帝様だ……!!!
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