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「相川さん、下の名前は何て言うの?」
「…小花」
「へぇ、可愛いね」
素直な感想を口にした途端、ジト目で睨まれる。え…俺なんか変なこと言った?
「どうせ、似合わないって思ってるんでしょ」
「え、思ってないよ」
本当に、何も考えず思ったことを口にしただけだ。
「可愛い名前だから、そう言っただけだよ。相川さんにピッタリだね」
ニコニコしながらそう口にする。見た目とね…とまでは流石に失礼だから言わない。ていうか、恥ずかしさとかそういうの俺にはあんまりない。寧ろ思ったこと何でも口にするから、良くねぇ達に怒られる。
「…あっそ」
そう言って目線を自分の足に巻かれた包帯に向けた相川さんは、それから何も喋らなくなった。俺もそれ以上喋ることもなくて、暫しの沈黙。
そういえば、相川さんって何組だろう。ふと湧いた疑問を口にしようとして、目の前で聞こえる車のエンジン音に気付いた俺。それは相川さんも同じだったようで、下に向けていた顔をパッと上げた。
黒のミニバンがハザードを点けながら俺達の近くで停車した。運転席のドアが開き、男の人らしき人が降りてくる。
「来た」
「あ、あれ相川さん家の車?じゃあ、お父さん?」
俺がそう言うと、相川さんは「兄ちゃん」とお父さんであることを否定した。兄ちゃんが迎えに来てくれるなんて、兄妹仲良いんだなぁ。
…良いなぁ、兄ちゃん。
なんてぼんやり相川さんのお兄さんに目を向けて、俺は驚愕した。
こ、この人はーー
〝ドSな彼氏に夢中過ぎて困ってます″のヒーロー、帝様だ……!!!
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