第十八章「彼氏と彼女」

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「わざわざ呼び出して言うことじゃないかもしれないけど、どうしても自分から言いたかったんだ」 悩んだ。この一週間、散々悩んだ。理人はわざわざ報告しなくてももう知ってたけど、周りにはまだ言ってない。 相川さんも、わざわざ言わなくて良いって言ってたし、そもそもバレるのも時間の問題。 クラス違うとはいえ同じ学校。頻繁に一緒に帰ってたら、すぐ噂になるだろう。相川さん、色んな意味で目立つしね。 「おめでと、南」 そう口にしたのは、瑠衣だった。 わざわざ、瑠衣にまで報告する必要はなかったのかもしれない。散々傷付けたのに、また瑠衣を傷付ける。そう思ったけど、どうしても他の人経由で瑠衣の耳に入るのが嫌で。 完全なる俺のワガママ、けど謝るのも違う気がする。 「瑠衣…ありがとう。ホントの、ホントに」 所々見え隠れする瑠衣の複雑そうな表情に、こんな風に報告してしまったことを一瞬後悔した。 「南…お幸せに」 瑠衣はちょっとだけ、笑った。 「ていうか南、あの相川さんと良く付き合えたね」 瑠衣の表情をジッと見てた真凛が、話題に触れても大丈夫だと判断したのかそんなことを口にした。 「え?」 「だって、あの相川さんだよ?学年一の美少女、けど性格最悪で誰とも仲良くならない、あの相川さんが。まさか南と付き合うなんてさ」 サラッと言うけど、君仮にも彼氏の前で性格最悪とか言いますかね… 「それが、案外そうでもねぇよ。なぁ、南?」 今まで黙ってた理人が、ニヤニヤしながらこっちを見る。 「い、いや…」 返答に困る。確かに相川さんと付き合い始めたことを、報告しようとは決めた。けどこんな風に話を掘り下げられると、なんて答えて良いのか分からない。 変に気を遣うのも何様目線なんだって感じだし、かと言ってあからさまに相川さんを褒めるのもデリカシーに欠ける気がする。 「話してみれば、案外普通よ?ちょっと毒舌かもしんないけど、まぁあの見た目なら何でも良いよな」 「…違うでしょ」 理人の言葉に、瑠衣が反応した。 「南は、外見で好きになった訳じゃないでしょ。ちゃんと中身で…好きになったんでしょ」 読めない表情の瑠衣。 真凛が何も言わずに、瑠衣にそっと距離を詰めたのが分かった。
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