229人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
「わざわざ呼び出して言うことじゃないかもしれないけど、どうしても自分から言いたかったんだ」
悩んだ。この一週間、散々悩んだ。理人はわざわざ報告しなくてももう知ってたけど、周りにはまだ言ってない。
相川さんも、わざわざ言わなくて良いって言ってたし、そもそもバレるのも時間の問題。
クラス違うとはいえ同じ学校。頻繁に一緒に帰ってたら、すぐ噂になるだろう。相川さん、色んな意味で目立つしね。
「おめでと、南」
そう口にしたのは、瑠衣だった。
わざわざ、瑠衣にまで報告する必要はなかったのかもしれない。散々傷付けたのに、また瑠衣を傷付ける。そう思ったけど、どうしても他の人経由で瑠衣の耳に入るのが嫌で。
完全なる俺のワガママ、けど謝るのも違う気がする。
「瑠衣…ありがとう。ホントの、ホントに」
所々見え隠れする瑠衣の複雑そうな表情に、こんな風に報告してしまったことを一瞬後悔した。
「南…お幸せに」
瑠衣はちょっとだけ、笑った。
「ていうか南、あの相川さんと良く付き合えたね」
瑠衣の表情をジッと見てた真凛が、話題に触れても大丈夫だと判断したのかそんなことを口にした。
「え?」
「だって、あの相川さんだよ?学年一の美少女、けど性格最悪で誰とも仲良くならない、あの相川さんが。まさか南と付き合うなんてさ」
サラッと言うけど、君仮にも彼氏の前で性格最悪とか言いますかね…
「それが、案外そうでもねぇよ。なぁ、南?」
今まで黙ってた理人が、ニヤニヤしながらこっちを見る。
「い、いや…」
返答に困る。確かに相川さんと付き合い始めたことを、報告しようとは決めた。けどこんな風に話を掘り下げられると、なんて答えて良いのか分からない。
変に気を遣うのも何様目線なんだって感じだし、かと言ってあからさまに相川さんを褒めるのもデリカシーに欠ける気がする。
「話してみれば、案外普通よ?ちょっと毒舌かもしんないけど、まぁあの見た目なら何でも良いよな」
「…違うでしょ」
理人の言葉に、瑠衣が反応した。
「南は、外見で好きになった訳じゃないでしょ。ちゃんと中身で…好きになったんでしょ」
読めない表情の瑠衣。
真凛が何も言わずに、瑠衣にそっと距離を詰めたのが分かった。
最初のコメントを投稿しよう!