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真凛が柔らかい表情でそう言うから、俺は思わず泣きそうになってしまった。
「またね」
「じゃーねー」
「バ、バイバイ真凛っ」
あの子は、なんて出来た子なんだ!俺なんかのフォローまでしてくれるなんて。真凛から俺は、今回のことで一回も責められたりなじられたりしてない。
真凛はただ、仕方ないことだって。そう言うだけだった。大切な友達を傷付けてしまった俺に文句の一つでも言いたい筈だろうに、真凛はそれをしない。
「真凛って、良い女だよなぁ」
しみじみ言う理人に、俺は首が取れても構わない勢いでブンブン縦に振った。
「彼氏居なかったら、俺間違いなく真凛に告ってるわ。いや、いっそ彼氏居ても…」
「お、おい理人っ!」
「冗談に決まってんだろ」
ケラケラ笑う理人に、俺は神妙な表情を向ける。
「俺が言えることじゃないけど、そういうの言ってたら本気でも本気って思ってもらえなくなるよ」
理人は、笑うのを止めた。
「分かってるけど、これが俺なんだし仕方ねぇよ」
「理人…」
「俺はお前みたいに変わろうとも思わねぇし、そんな勇気ないし。今までこれでやってきて、今更変わるとか無理」
いつもみたいなヘラヘラした雰囲気はない。下にし背を向けて、良く分からない表情をしてる。
「でも今のままじゃ、瑠衣は無理か」
「…理人、瑠衣のこと本気で好きなんだね」
こんな理人、初めて見た。
「だから、さっきからそう言ってんじゃん」
「いつから?」
「割と前から」
「なら、何で…」
瑠衣の側に居て、彼女取っ替え引っ替えしたりするんだ。
「言っとくけどな」
理人はやっぱり、俺を見ない。
「俺お前みたいに、お子ちゃまじゃないから。純粋な心とか持ってねぇし、瑠衣が俺のこと見てないって分かってそれでも一途に想い続けるとか、そんなん無理だから。好きって言われたら、俺も好きになれるかもって思っちゃうから。そんなヤツだし、俺」
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