第十八章「彼氏と彼女」

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理人は、本気で瑠衣が好きなんだ。瑠衣が好きで側に居て、でも瑠衣は理人のこと多分友達としか思ってなくて。 理人は、良いヤツだ。適当だけど、むやみに人を傷付けたりしない。周りを良く見てて、発言が軽いから気付かれにくいけど本当は優しい。 俺は、そんな理人が大好きだ。側に居て、理人の気持ちに気付けないなんて。俺は何でいつも、自分のことしか考えられないんだ。 友達なのに。大好きなのに。俺が理人にできることは、何もないのか。 「お、俺さぁっ!」 普段の五倍位の声量。流石の理人も、驚いた様子で顔を上げた。 「お、俺…俺相川さんのこと大好きなんだよね!」 恥ずかしがるな、ホントのことだ。 「…は?」 理人は、思いっきり引いている。そりゃ、当たり前。 「いやだから、俺相川さんのことホント好きでさ!もうめっちゃ可愛くて!顔は勿論なんだけど、言動とか、動きとか、もう全部!この世の生き物なのかって位、可愛くてさ!」 「何この唐突な惚気。俺一体何を聞かされてんの」 眉間の皺がこれでもかって位。下手したら殴りかかられるかも。 「いやでもさ、まさか、まさか付き合えるなんて夢にも思わなくてさ。俺、こんなじゃん。可愛いし、ドSじゃないし、本質は何にも変われてない」 「お前は何が言いたいんだ」 「つまり、何が言いたいかって言うと…み、未来は分かんないってこと!」 こうなりゃヤケだ。理人をちょっとでも元気付けられるなら、ピエロにでもゾンビにでも何でもなってやる! 「そういうこと!以上!」 満足気な表情を向けると、理人は一瞬止まって。それから思いっきり噴き出した。
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