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「…アンタ一体、何の話ししてんのよ」
項垂れる俺の頭上から、呆れたような声が降ってきた。情けな過ぎて、顔が上げられない。
「何にそんな落ち込んでんの。言ってること意味不明だし」
「だって…」
早乙女家では、女性が絶対。勿論、ウチが特殊なんだって分かってる。分かってるけど、俺は無意識に女子をエロい邪な目で見ないようにしてた気がする。
別に女性恐怖症とかではないんだけど、なんだろう。自分にこんな感情があったことに驚きというか。俺、そっち方面苦手であんま考えたことなかったし。理人には良くお子ちゃまって言われてたけど。
そして実際、自分が衝動に任せて相川さんの頬っぺた触っちゃって、物凄い自己嫌悪に陥った。このまま近くにいちゃ、相川さん汚しちゃいそうな気さえする。今までちゃんと考えてこなかった分、手に負えない。
そんな俺のモヤモヤした気持ちを、相川さんは
「何それ。そんなの当たり前じゃん」
スパッと、一刀両断した。
てっきりもっと引かれるかと思ってた俺は拍子抜けの間抜けズラ。いや、さっきの発言は十分引かれてたけどね。
「相手のこと好きなら、もっと触りたいって思うのは当然でしょ?何深く考えてんのよ」
当たり前みたいに言う相川さんに、後光が差して見えた。
「ホ、ホントに…?」
「何が」
「嫌いに、なってない?」
さながら俺は、絶対捨てられると確信してる子犬だ。多分、目にちょっと涙溜まってる。
「なる訳ないでしょ」
ここまでは、クールな表情。でも嬉しい言葉。ありがとう、大好き。
「じゃあ、好き?」
「…は?」
相川さんは、また時を止めた。
だ、だって聞かなきゃ不安なんだもん。
…わ、我が思考ながら気持ち悪っ!脳内が乙女過ぎる。ちょっと可愛い脱却しかけた筈なのに、今度はなぜか思考回路が乙女になってしまった。
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