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そんな乙女な早乙女南、言ってしまって後悔してももう遅い。相川さんのことだ、照れ隠しにチョップかまされるか適当に「はいはい、好き好き」で終わりそうな予感満載。
まぁそれも、今となっては照れ隠しだって分かるから、それはそれで可愛いんだけどね。照れ隠しのチョップ。実はそれなりに痛いんだけど、可愛いからその痛みすら幸せ。痛いの、好き。
…あれ?俺本格的にヤバいヤツになってない?
相川さんは、数秒間時を止めてジッと俯いてて。かと思ったら、バッと顔を上げて片手を振り上げた。
あ、チョップだ。チョップの方だ。
瞬時に身構えた俺に降ってきたのは、いつもの照れ隠しチョップじゃなかった。
相川さんは、俺がさっきしたみたいに、俺の頬っぺたにそっと手を置いた。普段は色白の顔が、耳まで赤い。勢いのある瞬きをたくさんしてて、その度に長い睫毛がバサバサ音を立てそうだった。
「す、すすす、好き…っ」
真っ赤になりながらも、相川さんは俺の頬っぺたから手を離さない。目線はキョロキョロしてて、相変わらず瞬きを繰り返してる。
けどそれでも、俺の頬っぺたには彼女の温もりがしっかりあって。それが、この状況が夢じゃないことを教えてくれてるみたいだった。
「ほ、ほ、ほら。わ、私だって一緒でしょ?早乙女君に、許可なくいきなり触ってる」
「あ、う、うん」
「す、好き、だから。こ、こうやって触りたいって。そう思う私も、そこら辺の痴漢するオッサン?」
「ま、まさか!」
首をブンブン横に振りたい、けど頬っぺたの手を離して欲しくないので代わりに両手をブンブン振って否定を表現した。
「そんな訳ないじゃん!相川さんに触られるなんて夢みたいだし、寧ろどんどん…」
そこでまた我に返った。俺はまた、余計なことを…!
「い、一緒。だから」
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