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相川さんの手は、若干震えてて。それでも、離そうとはしない。
「私、決めたから。前みたいに、思ってもないこと言わないようにするって。早乙女君のこと、傷付けたくないし、変に拗れたくないし。それに、いつまでも照れ隠しで悪態吐いてたら、あ、愛想尽かされちゃうかもしれないし…」
それはあり得ません。寧ろここ最近、悪態を待ってしまってる自分に驚いてる位です。
「い、いきなり全部は無理だけど、さ。ちょっとは素直に、ならないとって。私だって、早乙女君と付き合えたこと、夢みたいだって思ってるし」
「だ、だ、だから…その、早乙女君も。変な我慢とか、しないでほしい。私が、嫌なことは嫌って言う性格だって、知ってるでしょ?」
相川さんのキョロキョロしてた視線が、真っ直ぐに俺を捉える。いつもよりウルウルしてるように見えて、その瞳に吸い込まれそうだって思った。
「…好きだよ、南」
うわ、また、泣きそうだ。
「…俺も。俺も!好き、大好き!」
飛びかかりそうな勢いでそう叫べば、相川さんは「早乙女君、声っ!」って焦る。
いや、そんな暗くない道端で立ち止まって頬っぺたに手を当ててる時点で、僕たちは完全なるバカなカップルです。まさか、自分がこんな風になろうとは。
いつの間にか頬っぺたに相川さんの手はなくて。けど、さっきまであったっていう証みたいに俺の頬は熱い。
「も、もう良いから!帰ろう早くっ」
どっちが先か、なんてなかった。俺達は、物凄く当たり前に手を繋いで。繋ぐっていうより触れ合ってるって言った方が正しい位の繋ぎ方だけど、お互いの温もりを直接感じられるだけで、ホントに、ホントに、幸せだった。
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